歯の話

大人のお話ライブラリー

歯ブラシVS薬剤

ご存知の通り、虫歯・歯周病はお口の中の細菌が元で起こります。世の中随分と進歩したのに虫歯・歯周病対策といえば昔と変わらず「歯みがき」といわれ続けています。他の方法は無いのでしょうか?例えばうがい薬などの薬剤を使えばもっと楽に効果を上げられそうな気がします。大体、細菌をやっつけるのに歯ブラシと薬剤ならば誰でも薬剤の方が効果が高いと思うでしょう。

ところが現実にはそうではありません。以前にも書きましたがお口の中には「常在菌(じょうざいきん)」といわれる細菌たちがひしめいています。でも虫歯菌と歯周病菌以外のほとんどは悪さをしません。それどころか常在菌がひしめいていてくれることで、よそ者の病原性細菌が駆逐されるのです。そこへ抗菌性のある薬剤を使うと有用な常在菌をやっつけてしまいかねないのです。

さらに、虫歯菌や歯周病菌は「歯垢(しこう)」あるいは「プラーク」と呼ばれる鎧をまとっていて、薬剤を作用させてもその鎧の表層にしか効果が及ばず、内部の細菌たちは無傷なのです。こうしたことから近年歯垢やプラークが「バイオフィルム」ともいわれるようになりました。言い換えれば彼らもサバイバルの術を持っているという事です。

つまり、薬剤に頼ると有益な常在菌が弱体化して虫歯菌・歯周病菌が残るという、望んだこととは逆の結果を招く事になってしまうのです。 薬剤による攻撃には耐性のある歯垢・プラーク・バイオフィルムですが、物理的な攻撃には弱いので、虫歯・歯周病対策はやはりていねいな「歯みがき」が一番です。

ではうがい薬をはじめとする薬剤の使用は全く無意味なのかというとそうではありません。使い方を吟味すれば十分に有効です。例えば歯垢をふやかして取れやすくする成分の入った洗口剤がありますが、歯みがきを手助けしてくれます。要は適材適所、歯みがきをメインに不足があればそれを薬剤で補うと考えましょう。

(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

鳥とトウガラシ

今年(2017年)は酉年です。皆さんは十二支の中で鳥だけが歯を持たない動物である事に気づいていましたか?もちろん辰年の龍は想像上の生き物なので、厳密には歯が有るのかどうか分かりませんが、書画で見る限りでは歯が有る様です。

歯が無いと人間は何も食べられませんが、鳥は歯が無いにもかかわらず「猛禽類」の様に肉食の種までいます。歯が無くても鳥が食物を食べられるのはくちばしが発達したこともありますが、それだけではなく「咀嚼(そしゃく)」をしなくても良い消化器官が備わっている事が理由です。ではなぜ「咀嚼」をしないのか?それは体の軽量化のためといわれています。

歯は動物の身体を構成するパーツの中ではかなり密度が高く、大きさの割に重いのです。そして咀嚼をするためには大きな筋肉も必要になります。大きな筋肉が存在するためには大きく丈夫な骨が必要となります。これらは身体の重量を増やすことになり、飛ぶためには不利なのです。鳥の身体には永い進化の過程で羽根の様に「飛行」のために「得た」ものがある一方で、そぎ落とした部分もあるわけです。そしてそれが歯だといえるでしょう。

面白いことにこの鳥の特徴をちゃっかり利用している者もいます。それが唐辛子。植物は自力で移動できません。ですから甘い果実を動物に食べてもらい、動物の行動先でフンと一緒にタネが排泄され芽を出すことで生息範囲を広げます。一般に植物のタネが硬く丈夫なのは、咀嚼され消化作用を受けても排泄されるまで無事に生き残るためです。 では唐辛子はあんな辛い実を一体誰に食べてもらうつもりなのか?じつは唐辛子が辛いのは咬んだ時。つまり歯が無く咀嚼をしない鳥にはトウガラシは辛くないのです。また鳥は唐辛子の辛味成分である「カプサイシン」を感じないのだそうです。 つまり唐辛子は飛行能力がある鳥にだけ実を食べてもらい、より遠くへ効率良くタネを運んでもらう進化上の戦略をとったのです。そしてその目論みが成功したおかげで我々の誰もが知る香辛料となったわけです。

(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

19世紀の新素材

さて以下の4つは「ある素材」で歯科治療と関連があります。その「ある素材」とは?

カメラ・海底ケーブル・ゴルフボール・健康茶

答は「ガッタパーチャ」というゴムの様な天然樹脂です。天然ゴム同様電気を通さず、ゴムよりも弾性が少ない代わりに固く強靭なのが特徴で、19世紀以降、天然ゴムと同じく様々な目的に使われていました。そのかつて一世を風靡したガッタパーチャが長い時を経て、現代の歯科治療にも・・・。

クラッシックカメラの世界ではガッタパーチャは「グッタペルカ」と呼ばれていて、ドイツ「ライカ」製の古いカメラの外装(革の様な黒い部分)に用いられていました。人工皮革の無い時代、成型加工が容易で水分、油分に耐えるガッタパーチャ(グッタペルカ)は手汗や皮脂にさらされる手持ちカメラにはうってつけだった様です。ところが何十年と経つうちに紫外線などによる劣化が進み、剥がれてしまうことがあり、これを「グッタペルカ欠け(剥がれ)」というそうです。ガッタパーチャが容易に入手できない現代ではクラシックなライカのマニアにとっては、これは頭の痛い問題となっています。

世界初の実用海底ケーブルの被覆にはガッタパーチャが使われていました。海底ケーブルの歴史は意外に古く、1850年に最初の実用海底ケーブルが英仏海峡に敷設されています。実用化されるまでに色々な試行錯誤があり、従来の天然ゴムを使った被覆では耐水性に問題があったのですが、ガッタパーチャがそれを解決したのです。もちろん現代の海底ケーブルは高密度ポリエチレン等高分子化合物や金属で何層にも被覆されており、ガッタパーチャの時代とは比べ物にならない程高度で複雑なものになっています。

黎明期のゴルフボールは鳥の羽根を皮袋につめて縫い合せたものでした。それが19世紀半ばにガッタパーチャを型に流し球形にしたボールが発明され、安価でよく飛んだことから従来のボールにすぐにとって代わった様です。しかしガッタパーチャはゴムより固いとはいえ、やはり天然樹脂ですから傷がつきやすい材質です。したがって使っているうちにボールの表面に傷がつく、ところが傷がついたボールの方がよく飛ぶことに気付く人が現れ、これがのちにゴルフボール表面のディンプルにつながったといいます。ゴルフボールもまた現代ではガッタパーチャの代わりに高分子化合物やゴムが使われていますが、ガッタパーチャがゴルフボールの発達に大いに影響を及ぼしたのは確かです。

杜仲茶(とちゅうちゃ)という名のお茶があります。健康茶として売られていたりします。元になる「杜仲」の木は厳密にはガッタパーチャとは別種の植物なのですが、樹皮からガッタパーチャとよく似た樹脂が採れるため「ガッタパーチャ」と呼ばれていたりします。

現在歯科診療においてガッタパーチャは「根管充填材料」、いわゆる歯の根の中への詰め物として使われています。(※1画像参照)
これはガッタパーチャが人体に対し害を及ぼさず、扱いやすく、長期にわたり成分的に安定していて、さらにはX線写真に写るからです。(※2画像参照)
これだけの長所を持っているため、とって代わる材料はまだ決定的なものは現れていません。

19世紀には夢の新素材であったともいうべきガッタパーチャ。ゴム同様、産地である赤道直下の東南アジアでは、「プランテーション」と呼ばれる大規模農園で生産され加工されて世界中の様々な分野で使われていました。そんなガッタパーチャも今や見かけることはほとんどありません。しかしどんなものにもドラマあり。ガッタパーチャは人知れず現代の歯科医療で代わりの利かない重要な材料としての地位を得ているのです。


(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

歯根膜

歯はあごの骨に直接植わっているのではありません。咬んだ時の衝撃をやわらげるために、歯根と骨の間にクッションが存在します。これが「歯根膜(しこんまく)」です。歯根膜は繊維の組織で、ちょうど女性のはくストッキングのようにうすく歯根の表面を取り巻いています。健全な歯であっても力を加えると上下前後左右にわずかに動きます。これはこの歯根膜があるからです。

歯根膜の働きは衝撃吸収だけではありません。皮膚同様の感覚を持っていて、咬むと「どの方向からどれくらいの力が歯に加わったか」といった情報が脳に伝わります。この情報を元に脳は咬むための筋肉をコントロールします。簡単に歯からの情報と書きましたが、すべての歯に感覚が備わっているということは、一度咬むだけでも恐ろしく大量の情報が脳へ伝わることが分かると思います。その膨大な情報を瞬時に処理して、今咬んでいるものに応じて咬み方を加減するわけです。だれもが無意識にやっていることですが実は歯根膜あってのことであり、歯根膜-脳-筋肉の素晴らしい瞬時の連携の賜物でもあります。

逆に歯が無くなったらどうでしょう?脳の莫大な情報処理がその分必要なくなってしまいます。働かなくて済むと分かれば脳もサボります。最近の調査研究で、65歳以上で20本の歯がある方とそうでない方、また歯が少なくても入れ歯を入れている方とそうでない方では認知症の発症や転倒しやすさに差があることが分かりました。歯が19本以下の方は20本以上の歯がある方に比べて1.2倍要介護認定を受けやすいのだそうです。つまり自分の歯で咬むことが脳の老化防止に役立つことがはっきりしたわけです。
(参考https://www.jda.or.jp/park/relation/teethlife.html

さて、この歯根膜、残念ながら人工物で代用ができません。人工の歯は性能の面で天然の歯にまだまだ遠く及ばないのが現状です。ですから少しでも歯を残すこと、つまりは普段のお口の手入れが大切という事になります。そこで問題となるのは「モチベーション」。日常のきちんとした歯みがきは「面倒」でつまらないものです。地味な努力は継続が難しい、それは誰もが知っています。歯みがきの「やり方」は歯医者さんで教わることが出来ますが、モチベーションを高く保ち続けることは誰かに教わったからといって出来るものではありません。これまでは虫歯や歯周病防止といった「お口の健康」が歯みがきの目的でした。しかし歯みがきが口だけにとどまらず、自身の将来の要介護リスクにも関わるとなれば、「面倒」は取るに足らない小さなものに見えてくるのではないでしょうか?

(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

口呼吸

歯科治療が苦手な人はたくさんいますが、その理由は様々です。例えば音や振動に対する苦手意識だったり、痛みに対する恐怖心だったり、嘔吐が起きやすいからダメという方もいます。そして意外に多いのが「治療中息が苦しいから」という人達です。

ヒトは鼻で呼吸をします。そんなの当たり前と思いがちですが、実はそうではありません。呼吸は鼻で息をする「鼻呼吸(びこきゅう)」と、口で息をする「口呼吸(こうこきゅう)」に分けられ、元来日本人は欧米人と比べて口呼吸の人の割合が多いといわれています。常に口呼吸している人はいざという時に鼻呼吸に切り替えられず、それで歯科治療時に口の中に水が溜まり呼吸路が塞がれて「息が苦しい」わけです。
また口呼吸の弊害は歯科治療時に息苦しい事だけではありません。虫歯や歯周病になりやすく、口内炎や口臭の原因にもなります。さらに問題は口の中だけにとどまらず、風邪をひきやすいとか「睡眠時無呼吸症候群」になりやすいとも考えられています。

日本人に口呼吸が多いのは乳児期の「授乳期間」が短いからだとされています。母乳を吸っているときは自然に鼻呼吸を強いられます。つまり日本人は鼻呼吸の訓練期間が短いというわけです。欧米の赤ちゃんがよく「おしゃぶり」をくわえている姿を見かけますが、「おしゃぶり」も鼻呼吸の訓練として有効です。(ただおしゃぶりは歯並びを悪くする可能性もあるので「いつやめさせるか?」に注意が必要です)
他にも昨今の「アレルギー性鼻炎」の蔓延も口呼吸が多い原因と考えられます。鼻炎を患えば当然鼻の通りが悪くなり、どうしても口呼吸が主体になってしまいます。 ハウスダストなど通年性のものは当然ながら、花粉症といわれる季節性のアレルギーでも複数のアレルゲンを持っているケースは多く、季節をまたがって鼻炎が続き口呼吸が習慣化しやすいのです。

口呼吸が習慣化してしまっている人は常に口が開き気味になっていたり、唇が乾燥していたりするので判別は容易です。道行く人をわずかな時間眺めるだけでいかに口呼吸をしている人が多いかは誰でもわかります。

息の通り道が「鼻か口か」という違いだけで結果は大違いです。少しの練習で鼻呼吸が出来る様になる場合もあります。「息が苦しいから歯医者が苦手」という方以外も、一度ご自分の呼吸方法を確認してみることをお勧めします。

(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

麻酔の効きやすさ効きにくさ

歯科治療で麻酔の注射を打ったのに効かなかった経験はないでしょうか? 実は麻酔の「効きやすさ」「効きにくさ」には個人差だけでなく様々な条件が絡んでいます。

お口の中に麻酔注射をした際、真っ先に歯肉や頬、舌といった「軟組織(なんそしき)」には麻酔薬が効果を発揮します。これは血管が豊富にあり、血液が簡単に麻酔薬を運んでくれるからです。一方歯にはなかなか麻酔が効いてきません。

軟組織の下には骨があり、さらにその骨の中に歯根があります。この歯根の先に麻酔薬が作用してやっと歯自体に麻酔が効くようになります。ところが骨は硬いので当然注射針は刺さりません。ですから歯根の先に直接麻酔薬を注射することはできません。注射をすると軟組織と骨との間に麻酔薬が貯まり、このたまった麻酔薬が骨の中までじわじわ到達するのを待たないといけません。悪いことに軟組織と違って骨には麻酔薬を運んでくれる血管が少ないのです。その結果歯に麻酔が効くまでにはどうしても時間がかかってしまうことになります。そしてさらに様々な条件により麻酔は一層効きにくくなります。

麻酔イラスト

例えば部位。前歯と奥歯で骨の厚みが違います。一般的に前歯の周囲は骨が薄く奥歯は骨が厚いので、奥歯の方が麻酔が効きにくいということになります。 また上下でも違います。下顎の方が骨が緻密で硬いので麻酔薬が浸透しにくく効きにくいと言えます。なぜ上下で骨の硬さに差があるのかといえば、上顎は頭蓋骨の一部ですが、下顎は単体で存在しています。つまり下顎の方がより丈夫である必要があるからです。 このように部位からすると下の奥歯が一番麻酔が効きにくいという事がわかると思います。

そして性差。成人では一般的に男性は女性よりも骨格がしっかりしています。男性の方が歯の麻酔は効きにくいといえるでしょう。 最も決定的に麻酔が効きにくいのは「痛みのある歯」です。ズキズキと痛みのある歯は麻酔が効かないことがほとんどです。そんな時は麻酔を効かせるより、まずは飲み薬等で痛みを軽くすることを優先します。

ざっと考えても麻酔が効かないのにはこれだけの理由があります。「麻酔のお世話にならないこと」が一番の得策だということが良く分かると思います。

(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

歯の痛み

歯ってどうして痛いのでしょうか?また、歯には「痛い」というイメージが付きまとうのはなぜでしょうか?
歯と同じように硬い「爪」。爪の周囲には感覚があるけれど、爪自体に感覚はありません。だから爪切りは誰でもできます(爪が割れたりして痛いのは爪周囲の感覚による)。髪の毛も同様、根元には感覚がありますが、髪の毛自体にはやはり感覚はありません。
それなのに、歯はそのもの自体に痛みを感じます。「感覚」があるわけです。
歯の内部には空洞がありその空洞の中に、一般には「神経」と呼ばれる「歯髄(しずい)」があります。この「歯髄」が痛みを感じます。
ところで人間が体表で感じる皮膚感覚は、「触覚(しょっかく)」「痛覚(つうかく)」「温度覚(おんどかく)」というたった3種類の感覚の組み合わせで出来ています。言い換えれば「圧力」「痛み」「温度」この3種類のセンサーが体表のあらゆるところに配置されているということでもあります。指先など感覚の鋭いところはこれらのセンサーが密に存在し、足の裏や背中などは逆にセンサーはまばらに存在するという「密度」の差はありますが、基本的には3種類のセンサーは体表ではごく一部を除いて必ず揃って存在しています。
「ごく一部を除いて」と述べましたが、実はその一つが「歯」です(正確には前述のように「歯髄」)。歯には「痛覚」のセンサーしか存在しません。そう、歯は「痛い」しか感じることができない「痛覚に特化した」部位です。どんな刺激が加わっても「痛み」に置き換わってしまうのです。つまりこれが冒頭の「歯には痛いイメージが付きまとう」ことの理由の一つではないでしょうか。
そして「目」も特異な部位です。「結膜(けつまく)」や「角膜(かくまく)」には「痛覚」と「温度覚」しかないそうです。(厳密には「温度覚」の内、「冷覚(れいかく)」のみが確認されてるようです。)そういわれれば、目もほんの小さなゴミが入っただけで強い痛みを感じます。「痛みに特化」した場所であることは誰もが容易に納得できることでしょう。
「痛み」は非常に重要な感覚です。身体に危機が迫っていることを知らせるいわば「警告」の様なものです。つまり「痛みに特化」しているということはその部位が「重要器官」であることの証明でもあります。「視覚」を失うことは生物にとっては命取りになります。生物は進化の過程で「生きるため」に、代替の利かない「重要器官」を失わない様「痛覚」を発達させ、危機を未然に防いできたわけです。
さて翻って、目以上に痛みに特化した「歯」、進化の過程ではそんな「最重要器官」であるはずの「歯」を皆さん自身は「かけがえのないもの」と認識されているでしょうか?

(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

歯科治療と資格

「虫歯があると航空機のパイロットや宇宙飛行士になれない」という話は聞いたことがあると思います。虫歯が痛むことで業務に差し支えるのはどんなお仕事でも同じなのに、タクシーや電車の運転手は虫歯の有無は問われません。パイロットや宇宙飛行士だけが特別虫歯に厳しいのはどうしてでしょうか?それは「飛行機に乗ると虫歯が痛くなる」からです。つまり虫歯が重大事故に直結する可能性があるのです。ではなぜ飛行機に乗っただけで歯がいたくなるのでしょうか?
原因は飛行機内の「気圧」。航空機の機内は地上と同じくらいの気圧になるよう「与圧」されています。とはいっても0.7~0.8気圧程度と言われます。山だったら富士山5合目くらい、標高1,500m地点と同じくらいの気圧です。気圧が低いと歯の中の神経の入っている空洞(歯髄腔:しずいくう)内部、あるいは虫歯部分の空洞が膨張して歯の内部を圧迫し痛みが出ます。また、治した歯であっても、治療の際内部に空洞を作ってしまうと同じ理由で歯が痛みます。
戦闘機パイロットでは虫歯はさらに危険です。急旋回、急上昇などの際、最大で8Gという力が体に加わります。自分の体重の8倍もの力で操縦席に押しつけられるわけです。(訓練されていない人間は5G程度で失神するそうです)この時同時に血圧も上がります、急激な血圧上昇によっても虫歯が痛むのです。 宇宙飛行士は虫歯の有無をもっと厳しくチェックされます。旅客機と比べ物にならない減圧環境や、ロケット発射時に戦闘機パイロットと同様の高い「G」に身をさらす可能性があります。また、宇宙船内の行動は非常に細かくスケジュール管理されていて治療にさく時間はなく、宇宙船内は限られたスペースしかありませんので、治療のための道具など持っていく余裕がないことも理由でしょう。

一方、反対に歯科治療をしたことで失う資格もあります。
「え?治療したのにダメなの?」と思われるでしょうが、成人なら大半の人が持っている身近な資格・・・それは「献血」する資格です。
「抜歯」や「歯石除去」といった出血を伴う歯科治療を3日以内に受けた方は献血ができません。理由は「菌血症」。菌血症というのは血液中に細菌がいる状態です。
健常者なら実は菌血症は日常のちょっとした怪我でも起きていて特段珍しいことではなく、その程度ならなんら問題になりません。しかしお口の中は違います。お口の中は体の他の部位と比較にならないくらい細菌がたくさんいるので、口腔内の傷が原因の菌血症は輸血を受ける側にとっては命に係わる大きな問題なのです。

ところで、歯科医師という資格は虫歯の有無を問われません。皆さんはこれをどう思われるでしょうか?

(蒲郡市歯科医師会 中澤 良)  

あの音

世の大半の方が嫌いな、歯を削るときの「あの音」についてのお話です。
あの歯を削る機械「エアータービン」と歯医者は呼んでいます。圧搾空気で直径1㎝ほどの風車を回転させてその回転力で歯を削っています。歯は非常に硬いので、削るために必要な回転数がなんと1分間に約40万回転!それであんな音がするわけです。レーシングカーのエンジンでも1分間に2万回転が限界と言われていますから、いかにその回転数がすごいかがわかると思います。(ちなみに市販車では高速道路を走行してもエンジンは数千回転程度)
 
それだけの回転数で歯を削ろうとすると当然すごい摩擦熱が生じます。これを冷却するため水が回転と同時にスプレーされるようになっています。さらには口内を照らすライトが内蔵されているものも・・・。つまり「エアタービン」内部には圧搾空気だけでなく、水、電気も通っているわけです。口の中で使うものですから当然大きさが限られます。しかしその小さいサイズの中にこれだけの構造を持っている、このことだけでもいかに精緻を極めた精密機械であるかがわかると思います。
さらに、エアタービンは当然使用後には滅菌消毒されるわけですが、この際121℃2気圧という高温高圧の蒸気にさらされます。それでも焼き付いたり錆びたりしません。そしていつでも40万回転まで一気に回るのです。嫌われ者のあの音ですが、その裏には地味ながらも驚くべき技術が隠されています!
 
一方、あの音がしないものもすでに存在します。「マイクロモーター」と呼んでいますが、その名の通り電気モーターの回転力で歯を削る道具です。外観はエアータービンに似ているのですが、モーターの回転音だけで「あの音」はしません。ただ回転数は及ばず最高でも1分間に約20万回転。ですからどうしても「切削力」がエアータービンに劣ります。またギアなどの構造物がありますからエアータービンほど小型にできないのも難点です。少しばかりのサイズの違いですが、特に奥歯での使い勝手が全く違います。ですからエアータービンに100%とって代わることはできないのです。
他にもレーザー光線を当てて歯を削るという方法があります。機械的な部分を全く持たないのですから当然「不快な音」は皆無です。ただこれは虫歯の患部などごく狭い範囲への応用に限られ、「冠を被せるために歯を削る」という使用には全く向きません。
 
以上の様に「あの音」を歯科治療から完全になくすのは現時点ではまだ無理です。「あの音」を聞きたくないのなら「歯を悪くしない」のが賢明です。

さわやかな笑顔は「口もと」から

『目』というのは顔の中で大変表情豊かな部分です。
『目』以上に表情豊かな部分といえば『口もと』であろうかと思います。
ところが歯並びが悪い、歯・歯ぐきの色が悪い、笑うと歯全体が見えてしまう、歯と歯に隙間があるなど、人それぞれ悩みは尽きないものです。
こんな悩みがあると口もとを気にして、人前で大きく笑ったり、おしゃべりするのも何となく気が引けるものです。
こんな悩みを解決するのも『歯科医療』なのです。若い人ばかりでなく、たとえばお年寄りの入れ歯を自然に見えるようにする、お年寄り臭くないお顔にして差し上げるのも歯科医療の範疇と言えます。ただ年配になるにつれて、見た目にあまり関心がなくなる、あるいは逆に本当は気になるのだが、今更この歳でと思われるかたも多いようです。
老若男女だれしも若々しくて清潔感あふれる口もとであってほしいものです。
噛めるだけでよいという時代でもなさそうです。

歯周病

歯周病とは、歯垢、歯石が主な原因となって起こる病気です。歯垢は食べカスを栄養にして増殖した細菌の塊です。歯石とは、この塊のに唾液中のカルシウムなどが沈着して石灰化したものです。歯石が少しでもあれば、その周囲にまた歯垢が着きます。これらが付着する事により歯の周囲の歯肉(歯ぐき)や骨等(歯周組織といいます)が炎症を起こして、気づかぬうちに徐々に組織が破壊されていく病気です。
最初は歯肉炎の症状がでます。歯ぐきからの出血、そして腫れ、口臭などが現れます。次第に、歯がグラグラしてきて、硬い物が噛みにくくなり、冷たい物などでしみたり、場合によっては上下の歯を合わせるだけで痛い事もあります。さらに、歯をつかんでいる骨の破壊が進むことで、最後には歯は抜けてしまいます。1本の歯を失うだけでなく、前後の歯の骨まで溶けて駄目になっている可能性もあります。

歯周病予防と再発防止

初期の歯周病は歯磨きをしっかりすれば効果的に治すことができます。 つまり、歯磨きによって予防するだけでなく、これ以上悪くならないように維持したり、症状を かなり改善させたりすることができます。また症状が進行した場合でも、歯の汚れがしっかりとれて いればかなり症状が良くなってきます。
歯を磨くと血が出るから、痛いから触らないということは、大きな間違いです。磨かないから汚れが たまって歯周病が悪化し血や膿や痛みがでてくるのです。
多くの方は、「歯磨きなどすでに毎日している」と言われるでしょうが、もう一度、鏡の前で 歯ブラシの使い方や毛先の方向を見直してください。または、磨き終わった後で、指先で歯と歯ぐきの 境目を拭ってみてください。白くぬるっとした歯垢がついていませんか?
歯周病予防のためには、一人一人に適した歯磨きが必要ですし、歯磨き以外の処置が必要な場合も あります。御自分の歯や歯ぐきには、今何が必要で、何をすべきなのか、お気軽に歯科医院で 尋ねてみてください。


蒲郡市歯科医師会コンテンツ
 
蒲郡市歯科医師会事務局 所在地:
蒲郡市浜町4番地
(蒲郡市保健医療センター内)
TEL:0533-69-8020 FAX:0533-67-0990 Email:info@gamagori-dental.org

 
 
お口の情報リンク
 
蒲郡市歯科医師会

Copyright (C) 2012 Gamagori Dental Association. All Right Reserved.